公益社団法人郡山青年会議所
2026年度 理事長所信 第66代理事長 大越 惇平
【スローガン】
未来志向 〜 志す仲間と、かつてない未来へ 〜
【はじめに】
私が郡山青年会議所の門を叩いたきっかけは、2011年東日本大震災での経験でした。未曾有の災害に直面し、自身も被災者として暮らしが一変しました。地域には多くの困っている人がいましたが、当時の私は何一つ役に立てず、その無力さを痛感しました。「何かしなければ」と思う一方で、「誰かがやるだろう」と他人事のように考えていた自分もいました。結局、崩れた自宅にいるだけで何もできなかった後悔は、今も胸に深く残っています。そんな私に、価値観を変える一言をかけてくれた方がいました。
その人はこう言いました。
「有事に、『自宅にいてください』と言われるのではなく何かしたいのなら、それができる環境に身を置きなさい。環境は自分で創るものだよ。」
この言葉に強く突き動かされ、私は青年会議所と出会いました。青年会議所は私に「機会」と「価値観」を与え、仲間と共に挑戦する力があることに気づかせてくれました。そして、青年一人ひとりの行動こそが、まちを動かす原動力になるのだと確信するに至ったのです。
1949年、戦後日本の混乱のなかで「新日本の再建は我々青年の仕事である」と立ち上がったのは今の私たちと同じ世代の青年たちでした。そして1961年には郡山青年会議所が誕生し、先人たちは大きな志を掲げ地域の未来を切り拓いてきました。その歩みがあってこそ今日の豊かさがあり、私たちにはその歴史と志を受け継ぎ、次の世代へ希望をつなぐ責任があります。
現代社会は人口減少や急速なデジタル化、国際情勢の不安定化など、大きな変化の最中にあります。特に郡山市においても、少子高齢化や若者の流出といった課題が顕在化しており、地域の持続可能性が問われています。地域に根ざす郡山青年会議所もまた、こうした時代のうねりから無縁ではなく、常に新しい価値観と挑戦への姿勢が求められています。
本年度、郡山青年会議所は創立から65周年を迎えます。地域のために情熱を注いでこられた先輩諸氏に心からの敬意と感謝を表し、その歩みを礎に私たちは次の時代に挑戦していかなければなりません。だからこそ今、組織の在り方やまちへの貢献の仕方を真摯に見つめ直し、多様な価値観を尊重しながら一人ひとりが理想の実現に力を尽くすことが求められています。
本年度は「未来志向〜志す仲間と、かつてない未来へ〜」をスローガンに掲げ、私たち自身の物語を紡ぎ、仲間と共に地域の未来を切り拓く一年といたします。
【挑戦する組織へ】
青年会議所の魅力はメンバー一人ひとりが自ら考え、行動し、課題を乗り越える過程で成長できる環境にあることです。郡山青年会議所もこれまで組織規模の拡大に努めてきましたが、人口減少が進むなかで活力を維持するためには、新たな工夫が求められています。
現在の郡山青年会議所のメンバー構成には偏りがあるものの、改善を重ねることで幅広い人財が集う組織へと前進しており、今後更に発展していく可能性を有しています。大切なのは、多様な個性をもつ仲間が集い、互いに学び合い、高め合える環境を築くことです。そこから生み出される新たなアイデアは、明るい豊かな社会の実現には欠かせません。私たちが目指すのは、「多様な個性をもつ仲間と共に挑戦し続ける組織」です。
そのために郡山青年会議所では、様々な背景をもつ青年が青年会議所の運動・活動に積極的に参画できる環境を整えます。多様な個性を受け入れるために、柔軟な参加形態や活動の工夫を取り入れ、誰もが関わりやすく成長できる基盤を創り上げてまいります。
一人ひとりの新しいアイデアが組織に集まることで、時代の変化に即した柔軟な発想が生まれます。次世代を担う青年に参画の機会を広げ、多様な人財がつながり、互いに学び、挑戦を続けていく。その積み重ねが、やがて組織と地域の未来を切り拓く力となるのです。
【広報とパートナーシップが創る未来】
情報発信の手法が多様化した現代では日々膨大な情報が流れ、そのなかでどのような内容が選ばれ、人の目に届くのかが問われています。こうした情報社会においては事実や数字の発信だけでは、想いを十分に届けることが難しく、私たちの活動への共感を広げる工夫をしていかなければなりません。
そこで私たちは、事業の成果や記録に加え、その背景にある想いやメンバーの声を発信していきます。活動を通じて得た学びや希望を共有し、発信力を磨きながら共感から行動へとつながる広報活動を展開します。
共感はやがて「共に行動したい」という想いを生み、地域の新たな挑戦の原動力となります。そこから生まれる関心や愛着が、仲間やパートナーとのつながりを深め、地域を良くしたいという意識を育てていきます。私たちは広報を通じて共感の輪を広げ、持続可能な関係を育みながら確かなパートナーシップを築いてまいります。
【想いを共にするまちづくり】
郡山のまちづくりを考えるうえで欠かせないのは、この地域がもつ「交通の要衝」という特性です。郡山は福島県内でも有数の交通拠点であり、来県者の滞在を促す拠点として大きな可能性を秘めています。かつて宿場町として繁栄した歴史を背景に、交流と往来の中心地であり続けてきた郡山の強みを、現代において改めて活かす時です。
しかし現状は、交通の利便性や歴史・文化・自然資源といった郡山の強みが十分に活かされ、広く伝わっているとは言いきれません。多くの人が立ち寄るまちだからこそ、滞在や交流へとつなげる工夫を重ね、まだ知られていない魅力を磨き発信していく必要があります。
本年度は観光を軸に事業を展開し、郡山の魅力を再発見することから始めます。まずは私たちメンバー自身がこのまちの魅力に気づき、共通の認識をもつことで、対外的なアピールに説得力をもたせます。そしてその発信は地域内にとどまらず、国際的な機会においても積極的に行い、郡山を広く知っていただくきっかけとします。
郡山の魅力を再発見しその価値を共有することは、同じ方向を向いてまちづくりに取り組む意識を育みます。私たちは「交通の要衝」という独自の魅力を基盤に、地域資源を観光へと結び付け、来訪者が郡山を滞在拠点として選びたくなるような環境を創造する運動を展開してまいります。
【未来の主役のために】
近年、青少年はSNSを利用して気軽に情報発信ができるようになった一方で、ネット依存や誹謗中傷、フェイクニュース、オンライン上での犯罪被害など、社会に深刻な課題が生じています。情報の正確性を見極めたうえで、自分の考えを責任をもって発信できる力を育むことの必要性は高まっています。
こうした時代だからこそ、子どもたちには情報と正しく向き合う意識が求められます。しかし現状では、子どもたちが主体的に学び、新しい学びや表現に挑む場は十分とは言えません。
そこで今、私たちが取り組むべきは「メディアリテラシー」です。情報を正しく読み解き、判断し、自ら責任をもって発信する力を、子どもたちが身につけられるように育んでいくことが求められています。特に、近年子どもたちの間で社会問題となっているネット利用やSNSでのトラブルは、いわば「ネットリテラシー」の課題でもあります。こうした具体的な問題に対応しつつ、幅広い視点で情報と向き合う姿勢を養うことが大切です。
家庭・学校・地域・行政が連携し、青少年が安心してメディアリテラシーを学び、表現し、互いに高め合いながら成長できる環境を整えることは、未来の主役である子どもたちが「デジタル社会を生き抜く力」を身につけ、社会の一員として責任を果たせるようになることにつながります。そうして培った力が、やがて地域と社会を支える人財へと成長していく道筋となるのです。
【国際的な視野】
グローバル化が進み、国際情勢が不安定化する現代において、地域に根ざした活動だけでは新しい価値観や発想を十分に得ることが難しくなっています。特に地方都市では国際交流の機会が限られており、これからは世界の文化やこれまでにない価値観に触れることで、地域に新しい刺激を与え、既存の枠を超えた発想を生み出す力を得ることが必要です。
JCIは、国際的ネットワークを先導する組織となることをビジョンに掲げています。しかし近年において郡山青年会議所は、国際の機会を活かしきれていない現状があります。だからこそパートナーシップの一環として、国際の機会を積極的に創出・活用し、かつてない未来へ挑戦していきます。
国際的な視野をもつことは、地域に新たな可能性を広げ、未来への挑戦を支える基盤となります。私たちが目指すのは郡山にいながら世界とつながる地域社会です。そこで育った青年が、地域の未来を切り拓き、世界との架け橋として活躍していくのです。
【中長期ビジョンの策定】
本年度は創立70周年に向けた未来ビジョンとグランドデザインを策定し、郡山青年会議所の将来像と実現への道筋を明文化します。組織運営・事業計画・地域連携を一体化した戦略を描き、時代の変化に柔軟に対応しながらも、揺るぎない方向性をもつ持続可能な組織を築いてまいります。
中長期ビジョンの策定にあたり、いくつかの重要な論点を避けることなく取り上げます。行政や地域との連携の在り方や、会員に提供する機会の量と質のバランス、組織規模や財政の在り方など、組織の持続可能性に係わる論点で将来を見据えて考えていく必要があります。
また継続事業の位置付けについても検討します。代表的な事例である「久米賞・百合子賞」は本年度で65回目を迎えますが、継続して行う事業の未来を冷静に見直す必要があります。伝統を守りながらも、その意義を再定義し、未来の世代にとって価値ある形で継承する方法を模索してまいります。
これらのテーマは単年度制の青年会議所において、一年間で結論を出せるものではありません。しかし年度ごとに検討すべき課題を整理し、その積み重ねを次代へ継承し、さらに進化させていけるよう指針として残すことで、未来の担い手が活躍するフィールドを整えることができます。
【結びに】
かつての私は有事をどこか他人事のように受け止め、無力のまま立ち尽くしていました。しかし青年会議所との出会い、そこでの経験が私の価値観を大きく変えてくれました。仲間と共に挑戦することで初めて自らを動かすことができ、地域の課題に能動的に向き合う姿勢を学ぶことができたのです。
今の私があるのは、きっかけとなる一言を与えてくれた人がいたからにほかなりません。だからこそ今度は私たちが、すべての青年に「きっかけ」と「機会」を届ける存在でありたいと考えています。青年会議所での学びを個々の成長にとどめることなく、組織と地域の発展へ結びつけ、これまでにない挑戦を通じて新たな未来を切り拓き、次世代に希望をつなぐ運動を展開してまいります。
先人たちが築いた歩みを受け継ぎ、変化の時代にあっても挑戦を止めることなく、仲間と共に、そして地域と共に、新たな一章を刻んでいく―
その先に広がるのは、メンバー一人ひとりが成長し、郡山の未来をより豊かに輝かせる姿です。
志す仲間と、かつてない未来へ ―
